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名古屋高等裁判所 昭和24年(控)309号 判決

被告人

保木正平

主文

本件控訴を棄却する。

当審において生じた訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

被告人控訴趣意第一点について

原判決が認定した事実は「被告人は昭和二十四年二月二十五日高山市有樂町料理店大みや亭こと大上美代方において、石田新平から、さきに木村豊太郞に賭博の資金として貸與した四千円を、荒井正吉と共に取立てて貰いたい旨の依賴をうけてこれを承諾し、同日大みや亭へ木村豊太郞を呼び寄せ、同人に対し、おれは人の一人や二人位やつつける位はなんでもない、ぐずぐずしていると爲にならんぞ、などと申向けて同人を畏怖させ、居合せた南周二より三千円を借り受けさせこれを石田新平に支拂わせて、これを喝取したものである」というのである。從て被告人が所論の如く右賭博資金として貸與した金でもその取立請求は差支えないものと思い権利を実行する意図を有していたとしても、右原判示の如き場所に相手方木村豊太郞を招致し同判示の如き手段方法によつて暗に害惡を告知し同人を畏怖させて右金員を支拂わせたものである以上右は明らかに法の認める範囲を逸脱した所爲であつて恐喝罪の成立を認めるに妨げないものというべく單に民法の法規を知らなかつたという一事は恐喝罪の犯意を阻却する理由とならない。而して右原判示事実はその挙示する証拠によつて優にこれを認めることができ、記録を精査するも誤認を疑うべき点は存しないのである。故に論旨は理由がない。

中略

仍て刑事訴訟法第三百九十六條により本件控訴を棄却すべく、当審において生じた訴訟費用については同法第百八十一條第一項第百八十條に則り被告人をしてこれを負担させることとし、主文の如く判決する。

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